先日、私より二回りほど年上の先輩経営者の方とお話をする機会があり、様々な
お話を聞くことができた。
その会話の中で話題となったことが『後継者』についてであった。
幸にして、その先輩経営者にはすでに後継者がおり、どのように理念や事業を継承
していくかという話になった。
後継者という話題で思い出したことがある。
それは、私が尊敬する訪問診療医のことで、その方はとある地域の在宅医療の礎と
なった素晴らしい先生である。
その先生が運営する訪問診療クリニックは最大で7名もの訪問診療医を配置して、
自院が属する地域ばかりではなく、隣接地域の在宅医療の推進にも大きく貢献して
いた。
やがて、その先生も加齢に伴い後継者を考えなければならなくなった。
医師としても優秀であったその先生は、経営者としても優秀であり、事業を着実に
拡大していくことでその法人(会社)の価値はうなぎのぼりとなった。
がしかし、後継者という観点からそれが裏目に出てしまった。
所属していた医師に後を任せようとしたときに、企業価値が高すぎたため、その
医師たちは請け負うために必要な資金を準備することができなかった。
結果として、外資系の企業に身売りする形で事業を継承してもらうこととなったが
今や見るも無残な状況となっている。
当初の理念はどこへとやらで、営利のみを重視したクリニックへと変貌してしまい
地域から大きな距離を置かれることになってしまった。
そんなことを思い返しながら、自分自身に置き換えて思いを寄せたとき、
「このままじゃまずいなぁ。」と身震いしてしまった。
企業や事業の中には、「一代で幕を閉じる。」という性質のものもあるのかも
しれないが、基本的には時代背景に寄り添いながら『普遍性や永続性』を追求する
ことが必要なのではないかと考えている。
『次の世代にバトンをつなぐ』ことは、そう容易なことではない。