数年前から介護福祉の業界では『科学的介護』という言葉が流行っている。
これは、厚労省が主導している考え方で、
高齢者や障がい者への自立した生活の支援を実施するにあたって、「より科学的な
検証に裏付けされ、客観性が担保された根拠を持って支援する。」ことが重要で
あるとしている。
一昔前、どこのデイサービスでも、活動の一環で『風船バレー』が行われていたが
傍から見ていて、「何の目的でやってんだろう?何の効果があるんだろう?
渋々参加しているご利用者を見て職員はどう感じてんだろう?」と思っていた。
その疑問を職員へ投げかけると
「体を動かすだけではなく、五感を働かせるので心身の活性化につながる。」と
答えが返ってくる。
これは、「朝のラジオ体操に参加すれば、皆が元気で幸せになる。」という精神論
と同様で何の根拠もない。
ましてや、個々に異なる生活上の課題や身体機能面の能力が全く考慮されていない
このプログラムには違和感しかなかった。
このように、長年にわたって介護福祉の分野では、『精神論とその時の流行り』で
支援内容が組み立てられていた。
気の合う仲間と趣味で行う限りにおいてはそれでもいいだろう。
だが、公費を使って、様々な課題や背景を持った多数の人たちへの支援としては
あまりにもお粗末な内容と言わざるを得ない。
また、日本国内のどこで風邪をひいて病院にかかっても、対応が大きく変わること
はないが、介護福祉の分野においては、地域や担当者によってその対応は大きく
変わってしまう。
病気を診断する場合には確立された根拠があり、投薬や手術といった対応も同様で
日本国内の全ての医師がそのことを理解している。
しかし、介護の分野においては確立された根拠は乏しく、対応する専門職の間で
その人が持つ知識や技術に大きな差がある。
そこで、前述の『科学的介護』が大きく取り上げられるようになった。
このことが取り上げられるようになったことは大いに賛成するが、同時にいくつか
の危険性を含んでいる。
そのことについては、次回書きたいと思う。