北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

月別: 2020年12月

特定事業所集中減算の意義(その1)

2020.12.4

「意味が分からない」

先日、下記の報道を見て思った感想である。

 

厚生労働省は来年4月の介護報酬改定で、居宅介護支援の事業所の運営基準を見直

す方針を固めた。 以下の2点を利用者へ説明することを新たに義務付ける。

○ 前6ヵ月間に作成したケアプランについて、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与(販売)の各サービスの割合

○ 前6ヵ月間に作成したケアプランについて、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与(販売)の各サービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合

 

居宅介護支援事業の介護報酬算定基準の中に『特定事業所集中減算』という項目が

ある。この趣旨は「公平中立の立場にあるケアマネジャーが特定の介護サービス

事業所へ偏った誘導を行ってはならない。正当な理由がない場合にはペナルティー

を科す」というものである。

ご利用者を法人(会社)単位で囲い込んだり、特定の事業所とケアマネジャーとの

癒着を懸念してこのような対策が講じられた。

そして、同減算の対象事業は、訪問介護、通所介護といった所謂福祉系サービス

だけである。

 

なぜ、訪問看護や通所リハビリテーションといった医療系サービスがその対象とは

ならないのかについて、厚生労働省の説明は「医療系サービスは絶対数が足りてな

い。また、主治医の指示で利用するサービス事業所が決まるので、減算対象とは

しない。」とのことである。

全く持って意味不明の説明である。

たしかに、医療系サービスの利用には主治医の指示が必要となる。ただし、主治医

が「○○事業所を利用してください。」などと具体的な事業所名をあげることなど

ほぼない。結局は、ご利用者やご家族がケアマネジャーと相談して、事業所を決め

ることになる。

 

また、法人単位の囲い込みという点については、どこかの医療法人の代表者が同法

人に所属する居宅介護支援事業所のケアマネジャーに対して「うちの通所リハビリ

テーションを積極的に利用するようにご利用者を誘導しなさい。」と指示を出すこ

ともあり得るので、「医療系サービスだから囲い込みはない。」という理屈は成り

立たない。

 

厚生労働省としては、福祉系、医療系に限らず全ての事業所を減算の対象とした

かったが、医師会等の反発を受けて医療系サービスを対象とすることを断念して、

反発の少ない福祉系のみを対象とした。といったところが実情であろう。

 

政治的な駆け引きでコロコロと方針を変えるような省庁に「公平中立」という言葉

を気軽に使ってもらいたくない。

 

この減算が制度化された背景と言われている『特定の事業所とケアマネジャーとの

癒着』についても物申したいので、続きは次回に持ち越すこととする。

予防プラン委託促進の愚

2020.12.1

今年の最終月となった。

今年を振り返ると『コロナコロナコロナ』の1年だった。

 

振り返ると言えば、

先日の下記報道を見て、「厚生労働省は過去を振り返ることができないのか?」と

思ってしまう。

 

要支援の高齢者を対象とする介護予防支援のケアマネジメントについて、厚生労働

省は26日、地域包括支援センターから居宅介護支援事業所への委託を進める具体策

を提案した。予防プランの委託を進めるのは、包括の機能強化につなげることが

目的。過重になりつつある業務負担を軽減し、関係者との連携・調整や相談支援な

ど様々なシーンで更に力を発揮してもらう狙いがある。厚労省の2016年度のデータ

によると、居宅へ委託された予防プランは全体の47.7%。現行の介護予防支援費は

431単位で、これがネックになっているとの声が多くあがっていた。

 

平成17年(2005年)の介護保険法改定時に『地域包括支援センター』を制定

し、それ以前は居宅支援事業者のケアマネジャーが担っていた介護予防支援のケア

マネジメント(予防プランの作成)を同センターへ変更する必要性を説明する際に

厚生労働省は非常に回りくどい言い方ではあったが、要約すると「ケアマネに軽度

者(要支援)のマネジメントを任せると重度化させてしまうから、そこをケアマネ

業務から切り離す」と言っていたではないか。

 

それなのに、「委託が進まないから人参ぶら下げて委託を促進する」とは、開いた

口が塞がらない。

居宅支援事業者へ委託することが前提の制度設計なら、初めから居宅支援事業者の

ケアマネジャー業務から切り離す必要など全くない。

百歩譲って、地域包括支援センターが大部分を担い、居宅支援事業者は補足する

程度という事であればまだわかるが、現状でも半数近くの予防プランは居宅支援事

業者のケアマネジャーが作成している。

それを加算の新設だの、報酬単価アップだのと言って、ほとんどの予防プラン作成

を居宅支援事業者のケアマネジャーに担わせようとは、振り返る能力が著しく欠け

ているとしか思えない。

 

こんな省に新型コロナウイルス感染対策を任せなければならないことに大いに不安

を感じるのは私だけだろうか。