北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

月別: 2023年2月

高品質=多くの専門職の介入?

2023.2.13

『1月29日に筆記が実施された今年度の第35回介護福祉士国家試験の受験者数が分かった。社会福祉振興・試験センターの報告によると、前回より3931人少ない7万9151人が受験した。減少は2年連続となる。直近3年間は8万4000人前後で横ばいだったが、6年ぶりに7万人台まで低下。過去10年で2番目の少なさとなった。』

との報道を見て思うこと。

 

受験対象となる人口が減ってきているのだから、このような結果になることは凡そ

わかっていることではあるが、それでもこういった数字を目の当たりにすると、

いよいよ介護業界の人員不足が加速していくことを思い知らされる。

 

人材不足への対処としては、効率や生産性の向上が重要な要素となり得るわけだが

「サービスの質の維持向上」と「生産性の維持向上」が遭い入れない関係性にある

点が多々あることを考えると、医療や介護業界にとっては非常に高いハードルと

なってしまう。

 

サービスや品質を維持向上するためには、どうしても手間と時間と人手がかかる。

人類の英知を結集して、機械化やAIを導入しつつクオリティーを担保することに

成功している分野も多くあるが、クオリティーを多くの消費者が納得できる程度に

留めつつ必要量を供給することが優先される分野もある。

 

医療や介護業界でも機械化やAI導入は少しづつ進んでいる。ただ残念ながら、主要

な業務を置き換えることができるほど科学は進歩しきれていないため、どうしても

手間と時間と人手が必要となる。

また、人の生命や生活維持に直結することを生業としている分野だけに、「この

程度のサービスの質で」といって納得を得ることもまた難しい。

 

その最たる事例が、当ブログでしつこいほど取り上げている『要介護1と2の高齢

者に対する訪問介護、通所介護を市町村が運営する「総合事業」へ移管する構想』

に対する反応であろう。

別段この構想は、要介護1と2の方に訪問介護、通所介護サービスを利用できなく

させてしまおうというものではない。人材不足を鑑みて、少ない人員でかつ専門職

の介入を減らしつつもサービス提供体制を維持していこうというものである。

にもかかわらず、「反対反対」の大合唱が巻き起こる。

 

人手が足りていようがいまいが関係なく、高品質なサービスへのあくなき要求が

どこまでも続く。

ただあえて言わせてもらえば、介護の分野では「高品質=多くの専門職の介入」

とは限らない。地域の中で生活を営んでいる私たちにとって、地域の支え合いに

よって生活を継続することができることが高品質であることも非常に多くある。

そしてそこには必ずしも「多くの専門職の介入」が必須ではないばかりか、少しの

専門職の介入の方がより有効に働くことも少なくない。

 

介護業界にかかわりのない一般の方々にこのような考え方を理解してもらうことは

中々難しいのかもしれないが、介護業界の人間の一部が一緒になって「反対反対」

の大合唱をしているとは情けない。

労働者の賃上げ

2023.2.10

前回の当ブログで、

ここのところ、少子化対策とセットで、政府が話題としてとりあげていることに

『労働環境の改善』や『労働者の賃上げ』があるとして、労働環境の改善について

書いてみた。

 

今回は、『労働者の賃上げ』について書いてみようと思う。

労働者にとって賃上げは大変喜ばしいことであり、多くの経営者もできる限り多く

の賃金を労働者へ支払いたいと思っているはずである。

 

しかし、ここ数十年の日本の企業の約6割から7割が赤字経営であることを皆さん

ご存じだろうか。そして、新型コロナウイルスの流行や円安、ウクライナ有事など

企業へ打撃を与える事柄が立て続けに起きているため、その状況は改善するどころ

か悪化の一途をたどっている。

多くの経営者の心の内は、「給料を上げたいけど、無い袖は振れないし、無理して

しまえば会社がつぶれてしまう」といったところではないだろうか。

 

ただ、日本は欧米先進国と比較すると「企業が倒産しにくい国」と言われている。

それは、赤字計上した企業は法人税が免額になることや計上した赤字の額を複数年

引き継ぐことができたりといった優遇措置があるため、ちょっとくらいの赤字では

簡単に潰れないし、悪質な企業は法人税免額を狙ってわざと赤字計上したりする。

 

ここで何を言いたいのかというと、国は企業を“生かさず殺さず”都合よく利用した

いと考えているということである。

幾重にもわたる規制をかけて雁字搦めにして箍をはめて、それでも利益を上げれば

搾り取れるだけ搾り取る。でも、いざ潰れそうになれば潰れない程度に手を差し伸

べる。企業の意思や主体性は無いに越したことはないと考えている。

 

こうした状況の中では、一企業の努力で欧米先進国並みの『労働者の賃上げ』が

実現できるとは到底思えない。

昨今の政府の考えは、社会主義国家を目指しているように聞こえてならない。

そうなれば、『労働者の賃上げ』などさらに遠い話になってしまうだろう。

労働環境の改善

2023.2.9

ここのところ、少子化対策とセットで、政府が話題としてとりあげていることに

『労働環境の改善』や『労働者の賃上げ』がある。

ただし、どれをとっても現実的ではなく、ただスローガンを立ち上げただけとしか

思えない。

 

労働環境の改善の代表的な項目に、「休日を増やす」ことと「労働時間の短縮」が

あげられるが、労働人口が年々減ってきている状況の中で、休日を増やして労働時

間を短縮することでどのような事態が起きるのかは、火を見るより明らかだ。

 

一昔前、大手コンビニエンスストアのフランチャイズ加盟店の多くが深夜帯の人員

を確保することができないため、深夜の営業を廃止しようとしたところ、本部に

訴えを起こされて泣く泣く深夜の営業の継続を余儀なくされたことがあった。

そして、その人員不足の穴埋めは、加盟店の店主が寝ずに対応するしかない。おそ

らくは、体調を崩された店主も多くいたことだろうし、廃業を余儀なくされた方も

いたことだろう。

結果として、近所のコンビニが無くなり困った消費者が多くいたはずだ。

 

こうした状況は、なにもコンビニ業界だけの話ではなく、多くの業界が人材不足に

あえいでいる。何の手当もなく、労働者の休日を増やして労働時間を短縮すること

だけを進めてしまえば、一部の人に多大なしわ寄せがくることにしかならず、結果

として消費者が困ることになる。

 

さらに言えば、我が国のサービス業の多くは、“過剰”といっても過言ではない顧客

のニーズにこたえることが当たり前となっている。

物流業界は、深刻なドライバー不足の状況にある。にもかかわらず、配達日時を指

定されたあげくに家主が不在であれば何度も同じ荷物を配達しなければならない。

配送業者から、「労働者の休日を増やして労働時間を短縮したので、ご希望通りに

配達できません」と言われて納得する顧客はいないだろう。

 

このことは我々介護業界にもあてはまる。多くの事業者が「人手が足りない」と

言っているのにもかかわらず、要介護者の中でも比較的軽度な要介護1と2の高齢

者に対する訪問介護、通所介護を市町村が運営する「総合事業」へ移管する構想に

反対を唱えて、「何でもかんでも今まで通りに対応しろ」という輩がいる。

当然そんな輩に対して、「労働者の休日を増やして労働時間を短縮したので、ご希

望通りのサービス提供ができません」と言って納得してもらうことはないだろう。

 

今は令和の時代にある。決して、人手が余るほどいた昭和の時代ではない。

そのことを政府も国民も今一度認識したほうが良いのではなかろうか。

 

『労働者の賃上げ』については次回に持ち越そうと思う。

今を生きていない人たちの議論

2023.2.2

労働者不足が深刻化してきている現状を踏まえて、国会では「年収130万円の

壁」を解消する案が議論された。

 

「年収130万円の壁」とは、扶養者が会社員の場合、自分の年収が一定の金額を

上回るまでは、扶養者の「社会保険上の扶養」に入ることができるため、社会保険

料を払わなくて済むが、年収が「130万円以上」になると、本人が社会保険に加

入することになるため、給与から社会保険料が差し引かれて、手取りが減ることに

なるという仕組みのことを言う。

 

そのため、もっと働くことが可能であったたしても、手取りが減ることを嫌い年収

を抑える働き方をする人が非常に多くいる。

結果として、労働力不足解消の足かせとなっているのではないかとの理屈から、壁

の高さを140、150万円に引き上げるとか、差し引かれる社会保険料に相当す

る分を国が補填してはどうかといった議論が行われている。

 

しかし残念ながら、いま議論されている程度の内容では労働力不足の解消は“焼け

石に水”といっていいだろうし、手取りが減る分を国が補填するなど原理原則を無

視した暴論でしかない。

 

そもそも、昭和の古き良き時代の一般的なモデルである「お父さんが会社で働いて

専業主婦のお母さんがパートに出る」といった概念を令和のこのご時世に当てはめ

ようとすること自体無理がある。

生き方も働き方も多様化している今を生きている人たちを大昔の概念に当てはめて

もミスマッチしか起きない。

 

古き良き時代から抜け出せず、今を生きていない政治家がどれだけ議論しても、

労働力不足を解消することは困難を極めるとしか言いようがない。

結局、皆支え合いの中で生きている

2023.2.1

政府のここのところの発言を聞くと、『少子化対策』を本気でやる様子が伺える。

様々なしがらみの中でどこまで実現できるのか期待しながら見ていきたい。

 

この様な話題が上がると決まって、子供がいない世帯の一部から「私たちは何ら

恩恵を受けることができないのに多額の税金を使うことは不公平だ」との指摘が

あがることがある。

 

しかしこれって、社会の仕組みを理解していない“お門違い”の指摘である。

日本は、世代を問わず「困っている人は社会全体で支える」社会保障制度という

仕組みを取り入れている国である。

 

その代表的なものが今の高齢者に支給されている公的年金である。

この年金の財源は、高齢者自らが支払った税金や保険料ではなく、今の現役世代が

支払っている税金や保険料である。つまり世代間で支え合う仕組みとなっている。

そしてその支え合いの仕組みには血縁か否かは全く関係ない。

 

「子供がいないから不公平だ」とか言っている人たちも、高齢者となり年金を受給

することになれば、その財源を子供世代に頼らなければならない。

 

そもそもこんなことを言い出したら、逆の論法も出てきてしまう。

たとえば、「私には両親も祖父母もいないのに、何で今の高齢者の公的年金の財源

を支えなければならないのか」などなど。

 

社会保障制度は、自分や身内だけでは対処することが難しい課題を社会全体で解決

していこうとする考え方をもとにできあがった制度である。

にもかかわらず、「今の自分には当てはまらないから」と短絡的に結論付けるのは

いかがなものかと思う。