北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

月別: 2023年8月

料理は味覚だけで味わうものではない

2023.8.28

『政府は24日、働きやすい職場環境づくりに注力する先進的な介護事業者の表彰式を開催し、職員の処遇改善や人材の育成、現場の生産性向上で優れた取り組みを展開している介護施設などの功績をたたえるもの。好事例を取り上げて紹介し、その普及につなげていく狙いもある。』

との報道を見て思うこと。

 

思うことはただ一つ、「また、やってるよ」である。

当ブログの『行政が優劣の評価?』でも申し上げた通りだが、行政は何かと事業者

を評価したがる。

そして今回は、内閣総理大臣からの表彰が付いてくるとは恐れ入った。

 

何度も言うが、行政には事業者の優劣を選定するセンスも趣向もない。

ただ単に、予め設定した項目をクリアしていることが優良事業所だと決めつけて、

実質的な中身など大して見ることもできない連中が、良し悪しを語るなどお笑い

種もいいところだろう。

そもそも、予め設定した項目が正しければ良いのだが、行政にとって都合の良い

項目をあげつらっているだけで、まるで中身がない。事業者の優劣はそんな単純な

作業で決めることができるものではない。

 

「決められた調味料を決められた分量で調理することが美味しい料理」と決めつけ

ることほど情けない話はない。まして、料理に関する知識もなければ、料理したこ

とすらない人が評論家気取りでこうした定義を設定するなど呆れてしまう。

だいたい、料理は味だけが優劣を決める項目ではない。料理は味覚だけで味わう

ものではない。それに、同じ料理でも食べる場所や相手といったシチュエーション

によっても印象は変わってくる。

 

今回表彰を受けた法人のことはよく知らないので、そのことに触れるつもりは一切

ないが、行政が主導する表彰の類は決まってシナリオが予め作られている。今回も

何も無い真っ新な状態から審査を始めたわけではないことは大方予想できる。

これまでも、行政から高い評価を得ていながら、地域住民からの評判がすこぶる

悪い企業や事業者をいやというほど見てきた。

 

行政はいつまで不得意分野であるはずの評論家を気取るつもりなのだろうか。

余計なことはせず、黙って指導監督の役割だけを担っていたらよい。

当方は、内閣総理大臣からの評価よりも地域住民から高い評価が得られることを

目指したい。

お墓参りとうどんと灼熱

2023.8.23

今日の江別市の予想最高気温は33℃で、お隣の札幌市は36℃、ひよっとすると

過去最高記録を更新するかもしれないと言われている。

お盆を過ぎてもなお続くこの暑さにはさすがに参ってしまう。

 

話しは変わるが、先週末少し遅れて”お墓参り”へ行ってきた。

毎年、混雑する時期を少し外していたのだが、今年は日常業務の合間に新規事業で

ある『のみくい処トッカリ』の立ち上げや運営に日々明け暮れていたため、中々

都合がつかなかった。(ご先祖様、申し訳ありませんでした)

 

祖父母や父が眠るお墓をきれいに掃除して、お供えをしてきた。

そして帰りには、毎年恒例の当別町にある『かばと製麺所』でひと休憩した。

 

 

流石人気店とあって、昼前にもかかわらず1時間並んでようやくお目当ての

”うどんと天ぷら”をいただくことができた。

屋外に設置されているテーブル席で食べることにしたのだが、この日も猛暑で照り

付ける日差しに耐えながらの食事となった。(でもやっぱ、美味しかった~)

 

とにかくこの日もとても暑かった。

炎天下で1時間行列に加わっていたのだが、中には体調を崩したらしく、食事を

断念して帰っていく方もいらっしゃった。

 

これから外出を予定されている方も多くいらっしゃるだろうが、暑さ対策を忘れず

に楽しんでもらいたい。

希望の光となるか

2023.8.22

日本の製薬エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新しい

治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について、厚生労働省の専門家部会が

昨日、国内での製造販売承認を了承した。正式に承認されれば、認知症の原因物質

を除去する初めての治療薬となる。

 

これまでにも認知症薬は存在していたが、いずれも神経の働きを活発にして症状の

緩和を図る効果を狙っていたものだが、レカネマブは病気の原因となるアミロイド

βを除去し、進行を抑えることを狙うもので、認知症の原因物質を除去する初めて

の治療薬となり、国際的な臨床試験(治験)では、18カ月の投与で、偽薬と比べ

記憶力や判断力などの程度を評価するスコアの悪化が27%抑えられたとの報告が

あるなど、今後の認知症治療の希望の光となっている。

 

ただ残念ながら、この薬も万能薬とはならない。

一度、アミロイドβによって破壊されてしまった神経細胞は再生しないため、症状

が進んだ人には、レカネマブは対象となっていない。

また、薬を使った人の中で、脳内の浮腫や微小出血などの副作用も確認されていて

今のところは、それなりにリスクを伴う薬のようだ。

 

国内に認知症で苦しむ方やそのご家族が相当数いる。

希望の光が本物の光となる日が来ることを心から待ち望んでいる。

小規模多機能ホームの実地指導

2023.8.21

先週末、当方が運営する「小規模多機能ホームみのりの丘」が、江別市による

『実地指導』を受けた。

 

介護保険制度の下で介護サービス事業を行う事業者は、5~6年に一度、指定権者

である都道府県あるいは市区町村の訪問を受けて、法令に沿った適切な事業運営が

行われているかを確認する『実地指導』を受けることとなっている。

この実地指導を『監査』と表現する業界の方もいるが、それは正しくない。

実地指導は、文字通り指導を受ける場ではあるが、行政処分を受けることを前提と

したものではなく、行政と現場との意見交換に近いものである。

介護サービスの現場では、法令を適切に理解して運営しているつもりでいても、

その解釈を間違えていたり、判断に迷っていることがある。

そのため、行政の担当者との意見交換は、日頃の事業運営を整理することができる

絶好の場となることが多い。

 

今回の結果としては、概ね法令を遵守した運営になっているとのことであったが、

若干の書類の不備などがあり、反省すべき点はあった。

担当者の方々は、非常にわかりやすく丁寧にご指導してくださったし、今後に

役立つ様々なアドバイスも下さった。

今後の事業運営にとって、非常に有意義な時間を持つことができた。

 

ちなみに、『監査』とは、法令違反や不正がある、または強く疑われる場合に

行われるもので、何らかの行政処分を受けることが多い。

 

来月にも当方が運営する他の事業所が実地指導を受けることになっている。

更なる事業運営の改善にむけた有意義な時間としたい。

後押しすべきは多機能系サービス

2023.8.16

厚生労働省は、来年の介護報酬改定に向けた協議を重ねる中で、介護老人保健施設

を俎上に載せ、利用者の在宅復帰を後押しする機能の更なる促進を論点として提示

したが、日本医師会からは、「超強化型など機能が高くなるほど、人件費が上がっ

たり稼働率が下がったりして経営が厳しくなる。基本報酬の設定についてより詳細

な検討が必要ではないか」と提言があった。また、連合の生活福祉局長は、「在宅

復帰に向けた地域拠点としての役割、リハビリで心身機能を維持・改善する役割は

引き続き重要。報酬のメリハリ付けも念頭に置きつつ、サービスを必要とする高齢

者がしっかりと利用できるようにしていくことが必要」と述べた。

 

介護保険制度が制定されてから20年以上が経過しているが、介護老人保健施設の

取り扱いは迷走している。この施設は、「行き場を失った高齢者の社会的入院」を

解消するとともに、終の棲家として位置づけられている特別養護老人ホームとは

一線を画して、「在宅復帰を後押しする施設」という考え方のもとで誕生した。

 

立派な理念に基づいて制度化されたこの施設であったが、そもそも「行き場を失っ

た高齢者」の行き場を確保していないのだから、どれだけ立派な施設を作っても、

優秀なスタッフを揃えても「在宅復帰」にたどり着けるはずもない。

本来強化すべきなのは、受け皿となる在宅サービスの方である。逆説的に言えば、

介護老人保健施設のような立派な施設が無くても、在宅サービスが充実し十分に

機能していれば「在宅復帰」はいくらでも可能になる。

例えるなら、一生懸命に高性能な車を開発することに熱心で、肝心の道路を全く

整備していない状態と変わらない。未開の地で高性能なスポーツカーを走らせた

ところで”宝の持ち腐れ”にしかならない。

 

在宅サービスは、施設サービスと比較すると決して効率的とは言えない。

施設サービスの場合は、一所に要援護者も援助者も集まっているため、移動に時間

を要することもなければ、援助者の交代時にタイムラグも生じにくい。また、物理

的に多職種が連携しやすい。

一方で在宅サービスは、各ご自宅を単一の介護サービスが訪問して支援を提供して

いるため、上記の施設サービスであげた事柄が全て短所となってしまう。

在宅サービスは、時間や手間がかかる。つまり、人手とお金がかかるのである。

「施設を作ればなんとかなる」という安易な思考では、在宅復帰の課題は何一つ

解決しない。必要なときには手間やお金をかけなければならない。

 

ただし、人も金もないこのご時世で、むやみに在宅サービスを増やしていくことも

また非現実的といえるだろう。そこで、在宅サービスの中でも比較的効率がよく、

上記に挙げた短所が軽減される多機能系サービスを充実していく以外の方法はない

と考えている。

ところが、施設サービスよりも時間や手間がかかる多機能系サービスの介護報酬は

施設サービスよりも低く設定されている。

よほど強い理念をもっているか、その他のメリットが見いだせない限りは、時間や

手間がかかる割に報酬が低い事業を積極的に運営しようと考える企業はほぼない。

これが、多機能系サービスが増えてこない一因である。

 

国は、本気で「在宅復帰率」を高めたいと考えているのであれば、機能強化や介護

報酬改善の対象を介護老人保健施設ではなく多機能系サービスにするべきだろう。

その結果として、介護保険財政が健全化するだけではなく、在宅生活を強く望む

国民の要望に応えることにもつながる。

通所介護の延命は必須か?

2023.8.11

厚生労働省が先月末に今年度の最低賃金を全国平均で時給1002円とする目安を

決定したことを受けて、日本デイサービス協会は、最低賃金の引き上げを踏まえた

介護報酬の見直しを求める声明を公式サイトで、「他産業で賃上げが進むなか、

公定価格でサービス料を変えられない介護事業所が置き去りにされている」と問題

を提起し、通所介護などの基本報酬の引き上げを訴えた。

 

通所介護事業を運営する当方としては、基本報酬の引き上げは大変ありがたいこと

であり、同協会のそのような訴えは、事業者が勝手に価格を設定できないことから

考えても当然といえるだろう。

しかし一方で、同時に多機能サービスを運営していて思うことは、単独の通所介護

や訪問介護は事業としての効率が悪く、ご利用する方にとっても使い勝手が決して

良いとは言えないものだということである。

 

人も金も足りていない現状においては、効率の悪い事業を縮小して、効率の良い

事業を拡大することはセオリーといえる。そう考えると、基本報酬を引き上げて

通所介護の延命を図るべきか、軽度者への対応など事業の一部を介護保険制度の

枠組みから外したうえで、より効率を求める方向へ舵を切るのかの分岐点にある

ように思う。

 

私個人としては、少子化対策が一向に進まない現状を鑑みると、通所介護の延命を

図るべきではないと考えている。

人や金が足りないという理由で、介護支援を受けなければ生命や生活を維持する

ことが難しい方々が、必要な支援を受けることができないということだけは何が

あっても避けなければならない。

軽度者向けの通所介護や訪問介護は、介護保険とは違った形で存続させた方が良い

ように思う。

「つながり」や 「支え合い」

2023.8.3

厚生労働省が1日に公表した『厚生労働白書』の中で、今年は「つながり」や

「支え合い」をテーマにあげ、制度の狭間にあって必ずしも十分に対応しきれて

いない課題も顕在化しているとして、下記の具体策を打ち出した。

◯ 世代や属性を超えて様々な人が交差する居場所づくり

◯ 高齢者、障害者といった“属性別”から属性を問わない支援への転換

◯ 支援の申請を待つ「受動型」から「能動型」への転換

◯ デジタルを活用した、時間や空間を超えた新たなつながり、支え合いの創造

 

また、「制度から人を見るのではなく、“その人の生活を支えるために何が必要

か”という観点が大切」との認識も同時に示しており、とても良い方向へ進んで

いると感心した。

 

私は様々な場所で、「高齢者や障がいを持った方々は特異な存在ではなく、同じ

地域に住む同じ住民である。」、「地域の中で支援を必要としているのは、高齢者

や障がいを持った方々とは限らない。」、「場面が変われば、支える立場と支えら

れる立場は容易に入れ替わる。」と申し上げてきた。

 

社会保険制度を運営するためには、カテゴライズすることはある種必然といえる

が、いつの間にかその分類が一般化され、日常生活の中でも同様に取り扱われて

しまうことが多くある。そしてその結果、区別が差別を生み出していく。

10人10色の日常生活は、カテゴライズされるべきではない。

 

社会背景の変化とともに孤立や孤独が生み出されやすくなっている今だからこそ、

「同じ地域に住む者同士が、知り合い、必要な時には助け合う。」という単純な

ところに一度立ち戻るべきであろう。

ただし、言葉にすることは簡単であるが、実行・実現することは中々難しい。

 

今、当方事業所がある商店街とお隣の商店街のいくつかの店舗が発起人となって、

「地域の支え合いの推進」を話し合うこととなっている。一人の力は微々たるもの

であっても、多くの方々と共に歩めば大きな力となって、地域住民のお役に立てる

こともあるだろうととても期待している。

私たちもその一役を担うことができればと考えている。