厚生労働省が先月末に今年度の最低賃金を全国平均で時給1002円とする目安を
決定したことを受けて、日本デイサービス協会は、最低賃金の引き上げを踏まえた
介護報酬の見直しを求める声明を公式サイトで、「他産業で賃上げが進むなか、
公定価格でサービス料を変えられない介護事業所が置き去りにされている」と問題
を提起し、通所介護などの基本報酬の引き上げを訴えた。
通所介護事業を運営する当方としては、基本報酬の引き上げは大変ありがたいこと
であり、同協会のそのような訴えは、事業者が勝手に価格を設定できないことから
考えても当然といえるだろう。
しかし一方で、同時に多機能サービスを運営していて思うことは、単独の通所介護
や訪問介護は事業としての効率が悪く、ご利用する方にとっても使い勝手が決して
良いとは言えないものだということである。
人も金も足りていない現状においては、効率の悪い事業を縮小して、効率の良い
事業を拡大することはセオリーといえる。そう考えると、基本報酬を引き上げて
通所介護の延命を図るべきか、軽度者への対応など事業の一部を介護保険制度の
枠組みから外したうえで、より効率を求める方向へ舵を切るのかの分岐点にある
ように思う。
私個人としては、少子化対策が一向に進まない現状を鑑みると、通所介護の延命を
図るべきではないと考えている。
人や金が足りないという理由で、介護支援を受けなければ生命や生活を維持する
ことが難しい方々が、必要な支援を受けることができないということだけは何が
あっても避けなければならない。
軽度者向けの通所介護や訪問介護は、介護保険とは違った形で存続させた方が良い
ように思う。