3年に1度見直しが行われる『介護報酬改定』の施行が来年4月に迫っている。
そうした中で、
介護報酬改定に向けた議論を進めている審議会の14日の会合で、家族の会の鎌田
松代理事は、「例えば(収入が)国民年金のみで預貯金も少ない人などにとって、
介護保険サービスは経済的なハードルが高いもの」と指摘。「介護報酬の引き上げ
は経済的な支援とあわせて考えて欲しい。特にギリギリの家計でサービスを利用し
ている方々に対しては、新たな支援を検討して頂きたい」と要請した。
との報道を目にした。
同理事の要請は至極まっとうなものであり、異論は全くない。
ただし、こうした要請に端を発して、「介護報酬や自己負担割合の引き上げは、
高齢者いじめだ」と話題をすり替えるマスコミが数多くいることが気に入らない。
前年度の金融庁の報告によると
あえて個人差を無視して大きな枠組みで比較した場合、20代の金融資産額の平均
が165万円に対して、70代以上の平均は1314万円と8倍近い差がある。
30代の平均が529万円、40代の平均が694万円であり、単純に比較すると
高齢者の圧勝である。
「あえて」と但し書きしたように『高齢者=貧困』ではない。高齢者であっても、
相当額の金融資産を持つ者からはそれ相応の負担を求めるべきである。
また、若者の多くは、生活に必要なものが足りておらず、買い揃えなければなら
ない物が多数あり、高額なものは分割支払いをするなどの工夫をしていても貯蓄に
回せる金額はわずかである。生活を維持することで精一杯という若者は決して
少なくはない。
年数を経て、物が揃い、分割返済が完了して初めて貯蓄に回す余裕が生まれる。
その結果が前述の70代以上の金融資産額に示される。
社会保障費も家計と同様に収入と支出がある。
収入の大部分は、貯蓄に回す余裕がない若者たちが担っている。そして、社会保障
サービスの自己負担割合が低額であればあるほど、こうした若者たちの負担額が
増額されていく。
社会保障サービスの利用にかかる自己負担額の増額は、こうした若者たちに明るい
未来を示すことにもなる。
社会保障の制度設計においては、同サービス費の収入と支出のバランスを考える
ことと低所得者層の救済とは分けて考えなければならない。そしてその救済対象者
は、高齢者だけではないことも念頭に置かなければならない。そのように分けて
考えなければ、ごく一部の人たちが必要以上に苦しむだけの制度となってしまい、
永続性が担保されないものとなってしまう。
「とにかく高齢者を守る」か「若者の未来を守る」かのどちらを選ぶのかといった
思考は間違っている。「余裕のある人」が「余裕のない人」を手助けすることが
社会保障の本質であろう。
にもかかわらず、『世代を問わず支援が必要な低所得者』と『全ての高齢者』を
一緒くたにし、顧客である視聴者の多数を占める高齢者に迎合する記事を並べ立て
ミスリードし続けるマスコミには「正義」など語る資格はない。
ご年配の皆さんには、ご自分たちよりも苦境に立たされている若者を更に苦しめる
ようなミスリードには安易に乗っからないでもらいたい。