北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

月別: 2024年2月

封建的機能と個人の自由や権利の尊厳

2024.2.29

今月27日に厚生労働省が公表した『人口動態総計速報(令和5年)』によると、

・出生数は、758,631 人で過去最少(8年連続減少)
・死亡数は、1,590,503 人で過去最多(3年連続増加)
・自然増減数は、△831,872 人で過去最大の減少(17 年連続減少)
・婚姻件数は、489,281 組で減少 (同 30,542 組減少 △5.9%)
・離婚件数は、187,798 組で増加 (同 4,695 組増加 2.6%)

という結果が出たそうである。

この数字を見て、何か思うところがある方もいれば、「たかが数字」と思う方も

いるかもしれない。

 

私が個人的に注目したのは、出生数と婚姻件数が減少し続けているというところ

である。その原因は様々な方が様々な場所で検証していることとは思うが、私は

「これまで封建的社会が婚姻や出生を支えていた側面が大きく、根底にその思想を

抱えたまま、個人の自由や権利の尊厳に傾けた結果」ではないかと思っている。

 

例えば、現在も国会で審議が継続している「選択的夫婦別氏制度」については、

夫婦別氏を望む声が多数あるにもかかわらず、一定数の反対意見があって中々結論

が見えてこない。

その反対意見の多くは、封建的社会の象徴ともいえる「家制度や家長制」が、家族

という共同体の感覚を下支えしており、その伝統は守られるべきであり、夫婦別氏

はその根底を揺るがす行為であるというものである。

 

こうした考えと「個人の自由や権利の尊厳、あるいは夫婦間に上下関係はない」と

の考えが相容れない関係性にあり、前者の考えを持つ方が一定数いる状況で後者の

考えを持つ方が増えてきていることから婚姻件数が減少し、結果として出生数が

減少し続けているのではないかと思ったりする。

 

会社という組織は封建的である。そうすることで組織が掲げた理念や目的を達成

することが可能となるため、そのような形態をとっている会社がほとんどである。

しかしそんな会社組織であっても、封建的機能を保ちつつ個人の自由や権利の尊厳

をさらに深めていこうと様々な取り組みを行っている。

 

会社組織よりも家族こそ、個人の自由や権利の尊厳をさらに深めていかなければ

ならない共同体ではないのかと考えた時に、「選択的夫婦別氏制度」はその考え方

の一つの象徴となるのではないだろうか。

別段、伝統を軽視するつもりも否定するつもりもない。ただ、変化し続ける社会に

対応する家族の在り方を考えなければならない状況にあるように思う。

思いに寄り添える専門職

2024.2.28

ご利用者とお話をしていてつくづく思うことがある。

先日も糖尿病を長く患っている方との話で、「糖質を控えなければ病気が悪化する

ことは理解しているが、左程長いとは思えない残りの人生を制限だらけのストレス

に悩まされる生活にしたいくない」との思いを聞いて、「そういう考え方もある」

と思ってしまう自分がいる。

 

こうした考え方は多くの医療従事者からお𠮟りを受けることだろうし、社会保険の

財政の視点からも異論をぶつけられることだろう。

また、「今はそう思っていても、いざ病気が悪化した時に本人がこれまでの行いを

悔やんでも手遅れになる」との意見も至極まっとうであると思う。

 

ただ、そういった考えや意見を理解した上でも、”本人の今の思い”を完全に否定

することが主流であってはならないと思っている。

病気になりたいと思っている人はほとんどいない。治る病気であれば直したいと

思う人も大多数であろう。

それでも、病気の発症や悪化のリスクを承知の上であっても、治療より優先したい

”思い”を持っているのが人間ではなかろうか。

例えその”思い”がスケールの大きなものではなく、些細な事柄であったとしても、

一方的に否定されるべきではないと思っている。

 

先日、『末期がんの父が結婚を控えている娘との生活を優先するために積極的な

治療は受けないことを選択した』というテレビドラマを見た。

作中では、父娘の揺れ動く思いや周囲の理解や支援が細かく描かれていた。

まだ完結していないドラマなので今後、父娘の思いがどのように変化していくのか

との視点で見ていきたい。

 

例え同じ病気を患っていたとしても、病気と向き合う考え方は人それぞれだから

100人100通りあってもおかしくはない。

医療従事者には、こうした”思い”を一方的に否定するのではなく、本人のその時の

意向に寄り添いながら、疾患管理と生活の両立をともに考える人であってほしい。

私自身、ご利用者の思いに寄り添える専門職であり続けたい。

 

生産性を向上するということは

2024.2.8

大学を卒業して社会人になったばかりのころ、よく先輩や上司に「とにかく仕事は

丁寧にやりなさい」と指導されたものだ。勿論その教えは今も守っており、できる

限り丁寧に仕事をするようにしている。

しかし、年数を重ね経験を積んでいくうちに、「丁寧に行うことと、時間をかける

ことを混同しているのではないか」と感じる場面が増えてくることに気が付く。

 

我が国においては、「手間暇や時間をじっくりとかけて」を美徳とし、その行為が

良質なサービスと捉える考え方が根強くあるように思う。

何も時間をかけることを全否定しているわけではない。時間をかけなければ完結し

ない仕事は少なからずある。しかし、時間をかけなくても完結することができる

仕事まで「どれだけ時間をかけたのか」が評価の対象となったりする。

そして、私見ではあるが介護業界のようなサービス業は特にそういった点が評価の

対象となりやすいように感じる。

「どれだけ長い時間、相手の話を聞いたのか」、「どれだけ時間をかけてケア内容

を話し合ったのか」、「どれだけ時間をかけて説明をしたのか」などなど上げると

きりがない。

 

人材も財源も時間も無限にある状況であれば、それでも良いのかもしれないが、

そんなことはあり得ないし、我が国においては人材も財源も減り続けているの

だから、時間の制約もよりシビヤになってきているはずである。

 

また、時間をかけることによる弊害という意識があまりに薄い方がこの業界には

多くいるように感じている。

長時間かけてケア内容にかかる会議を行っている場面や長時間電話でご利用者や

ご家族と話し合っている場面に遭遇すると特にそのように感じる。

会議や電話が長くなる原因はさまざまであるが、往々にしてその原因はまとめる力

が著しく欠落していることにある。議題が定まっていない会議に参加することほど

苦痛なものはない。

それから、自分以外の人と長時間何らかの作業を実施するということは、その相手

を長時間拘束することになる。合意なくこうしたことが行われていたとすると、

それはもはや軟禁である。

そもそも、長時間にわたって行われた会議の最初の議題など誰も覚えちゃいない。

 

 

私は、「如何に限られた時間の中で仕事を完結するか」が重要と考えている。

ただし、そういうことを言うと「手早く行うことと、適当に行うことを混同する人

が出てくる」というイタチごっこが始まったりもする。

 

平均値と中央値

2024.2.6

先日、報道された

『介護職で組織する労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」の賃金の

動向などを把握する最新の結果によると、月給で勤める介護職の2022年平均

年収は392万4000円で、ケアマネの平均年収が394万8000円。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、全産業の同年の平均年収は496万

5700円で、今回の介護職やケアマネとの格差は100万円以上にのぼる。』

との内容を見て思うこと。

 

当ブログで以前にも取り上げた通り、「数字はうそをつかないが使う人によって

恣意的に事実がゆがめられる」ことがある。

『その業界の平均年収』と言われると、「その業界における多くの人がもらって

いる平均的な年収額」と思う人が多くいることだろう。

しかし、年収の平均値はごく一部の高額所得者がその数字を引き上げているだけで

多くの人がもらっている平均的な年収額ではない。

多くの人がもらっている平均的な年収額を求めるのであれば、「平均値」ではなく

「中央値」を示さなければならない。

 

そして、介護の業界においては、同じ業界あるいは同じ会社に所属する正規職員の

年収格差はほとんどないことが一般的であることに対して、他の業界の中には同じ

業界あるいは同じ会社に所属する正規職員の年収格差が10倍以上あるということ

が、少数ではあっても存在し、億単位の年収がある正規職員も相当数いることも

決して珍しいことではない。

そのため、介護業界の平均値と中央値には大きな差はないが、全産業で見た場合は

平均値と中央値に大きな開きがある。

 

つまりは、介護の業界とその他の業界との間には、多くの人がもらっている年収額

に大きな差はなく、格差100万円以上というのは事実ではない。

 

『UAゼンセン日本介護クラフトユニオン』は、「介護職員の処遇を少しでも上げた

い」との思いから、情報を発表したこととは思うが、いたずらに業界の年収が低い

低いと自分たちを卑しめることは避けたほうが良い。

私に言わせれば「年収は低くないし、伸びしろが大いに期待できる職種」である。

あっという間の1月

2024.2.5

つい先日に年が明けたと思っていたら、あっという間に2月になっていた。

この1か月間を振り返るとそんな気分である。

 

年明けから震災や痛ましい事故で多くの国民の尊い命が奪われてしまった。また

未だに行方が分かっていない方や日常生活を取り戻すことができず避難生活を余儀

なくされている方も大勢いる。

北海道の同業者の中には、ボランティアとして被災地に出向いている方やこれから

という方もいらっしゃるようだ。こうした支援に出向く方には心から敬意を表すと

ともに無事の帰還を願っている。

 

私も「被災地へ出向いて少しでも現地の方のお役に立ちたい」という気持ちを持っ

てここ数週間過ごしてきたが、現業を置いて出向くことが難しくもどかしく感じて

いる。

今は、日々の業務に加えて、4月と6月に改訂される介護報酬の変更内容に対応

するための準備に追われている。

 

そんな忙しい日々に追い打ちをかけているのが、積雪による交通渋滞である。

札幌市から車を走らせていると、江別市に入って突然道幅が狭くなっていることに

気が付く。しかも、枝道というよりは国道や主要道路で顕著に見受けられる状況に

ある。

行政は、限られた財源や人員の中でやりくりしているのだろうからとも思うので

あまり文句も言えないが、車の移動は夏場の倍の時間がかかっていることもまた

事実である。

行政には、この事実を認識したうえで通所系サービス等の送迎を急かすような指導

だけはしないでもらいたいと切に願う。

 

昨日は、高速道路で複数の多重事故が発生しており、お亡くなりになった方もいら

っしゃるようだ。

「とにかくこの時期は仕方がない。ゆっくり行こう!」と皆が呪文のように唱えな

がら行動しないと痛ましい事故が減ることはないし、結果として交通渋滞がより

一層増えることになる。