先日、介護職員の人材不足解消の政策として
厚生労働省は来年度から、介護の専門職を目指す若者を後押しする新たな施策を
開始する。福祉系高校に通って介護福祉士を目指す学生に対し、必要な学費を貸し
出す仕組みを新設する。卒業後、3年間にわたり介護の現場で働けば返済を全額
免除する。
との報道を見た。
元より介護福祉士を目指していた者にとっては朗報といえるが、人材不足を解消
する手立てとして適切なのだろうかと思う。
多くの人がやりたがらない仕事に対して、お金をちらつかせて誘い込もうとして
いる狙いが見え見えの政策である。
戦時中の「産めや増やせや」と発想は全く変わっていない。そこには、『質』など
問われていない。ただ『頭数』を増やすことのみが主眼となっている。
日本人の多くは、『ハンディキャップ』を「かわいそうなもの。直視してはいけ
ないもの。汚いもの。」と捉えているのではなかろうか。
その根拠に、当ブログ『悪気のない偏見』でも書いた通り、ハンディキャップを
支援する我々に対し、「大変だね~」と声をかけることが当たり前となっている。
この仕事に少しでも従事したことがある人から言われるのであればまだわかるが
従事したこともない人に『レッテル』を貼られるのは苦痛でしかない。
数十年前になるが、研修で伺った北欧のいくつかの国では、高齢者や障がい者に
かかわる仕事に就くことができるのは、小中学生の時に適正があるか否かの振るい
にかけられ残った者のみであるため、所謂『エリート』の扱いを受けると聞いた。
当然、所得も高額であり、人から尊敬のまなざしをうけるため、「大変だね~」
などと声をかけられることはない。
日本は、『高度経済成長』で劇的に経済や技術は発展したが、人間としての文化的
思想はいまだに発展途上なのであろう。
人を人として見ることができるか、人を頭数としてしか見ることができないかが
発展したか否かの違いではなかろうかと思う。