一般的な会話の多くは、
『是認(ぜにん)』かその対義語である『否認(ひにん)』で成立しているので
はないでしょうか。
例えば・・・
A「ダイエット中だけど、寝る前に甘い物食べちゃうんだよねぇ。」という話題に
B「少しぐらい食べてもいいんじゃない。」と、相手の思いや行為を評価して良し
とすることが『是認』です。
C「また体重増えるから食べちゃダメだよ。」と、相手の行為を評価して否定する
ことが『否認』です。
このように、話題を受け取った相手が、自分の評価基準で良し悪しを判断して、話
題の提供者へ自分の考えを伝えることが日常会話でよく見る風景でしょう。
カウンセリングや介護の相談支援などで専門家の介入が必要な場面では、提供され
る話題が一般的には良しとできない事柄が多いため、上のような日常会話の調子で
話を進めると自ずと『否認』が多くなります。
例えば・・・
A「私もう死にたい。」という訴えに対して
B「死んでもいいんじゃない。」という『是認』で返すことはあり得ません。
C「そんなこと言っちゃだめだよ。」という『否認』で返すことになります。
しかし、このように『否認』が繰り返されると誰でも相談したくなくなります。
また、否定ばかりされることで、自分に自信を無くしたり、精神的に不安定になっ
てしまい、精神状態が悪化してしまうことにもなりかねません。
そこで、私たち相談援助に携わる専門家は、『受容』と『共感』の重要性を学び、
実践します。
『受容』とは・・
A「私もう死にたい。」という訴えに対して
B「死にたいと考えているのですね。死にたいと思うほど、辛いのですね。」と、
相手の思いを評価せずにそのまま受け入れることをいいます。
このような受け答えから、相談者は「自分のことをわかってくれている。」と感じ
て不安が減ったり、冷静かつ前向きに考えるきっかけが生まれます。
この『受容』の根底には、人は生まれながらに自然治癒力(自己治癒力)という
自分で治す力を持っているという考え方があって、『受容』することで治す力を
発揮するためのきっかけをつくるといわれております。
例えば・・・
発症したガンに対して
A「治らないから薬で痛みを和らげる。」ことが『是認』で
B「手術で悪いところを取って治す。」ことが『否認』で
C「漢方を使って、自己免疫力を高める。」ことが『受容』といった感じで
治療でも相談援助の場面でも、『是認』、『否認』、『受容』は重要な考え方に
なりますが、使い方を間違えたり、どれかに偏った使い方をすると相談者や患者を
間違った方向へ誘うことになります。