『介護保険の地域密着型サービスの運営基準を見直す省令が今月26日に施行される。小規模多機能の登録定員・利用定員の弾力的な運用を認めるもので、厚生労働省は全国の自治体へ19日に通知を発出した。
小多機の定員基準はこれまで、全国一律で必ず適合しなければならない「従うべき基準」と位置付けられてきた。厚労省は今回、これを「標準基準」へ変更。相応の理由があって妥当性を説明できるのであれば、自治体が地域の実情に応じた独自基準を条例で定められるように緩和した。
事業所の登録定員が29人まで、”通い”が登録定員の半数から18人まで、”泊まり”が通い定員の3分の1から9人まで、などと明確に決められている。
今年度の介護報酬改定をめぐる議論のプロセスで、こうした方針が昨年末に固められていた経緯がある。過疎地の自治体の関係者などから、「定員の上限があるため利用者のニーズに応えられない」「利便性の観点からより柔軟な運用を可能として欲しい」などの要望が寄せられていた。』
との報道を見て思うこと。
当方も運営している『小規模多機能型居宅介護』事業であるが、同事業の開設準備
段階から疑問に思っていたことがあった。
それは、「通いサービスの定員」についてである。
現行では上記の報道のとおり、29名の登録定員に対して1日の通いサービス定員
は18名までとなっているが、同事業が制度化された当初の1日に受け入れること
ができる通いサービスの定員の考え方は、「登録定員の半数」というものだった。
おそらくは、制度設計の段階で「通いのサービスは、1人が1日おきに利用する
だろう。だから定員は登録定員の半数にする。」との想定で作られたのではなか
ろうか。もしも、このような想定で定員数を決めていたとすると高齢者介護の現状
を全く理解していない人が作ったものだと思う。
多機能な介護サービスを必要としている方々の『訪問と通所』の利用頻度は非常に
高い。同居しているご家族の介護力や諸事情などもあって、毎日訪問サービスを
利用し、週5日以上通いサービスを利用されているという方は非常に多い。
29名の登録定員×5日通いサービス利用÷1週間(7日)=20.7
この数字が1日の通いサービス利用者の平均値となる。
つまりは、この計算で行くと毎日3名の方が通いサービスを利用することができ
ないということになってしまう。
そのため、事業所側はどうするかというと、通いサービスの利用頻度が高いご利用
者を受け入れた後は、利用頻度が低いご利用者を受け入れて平均値を下げようと
したり、「定員オーバーするから」という理由でニーズがあるにもかかわらず通い
サービスの利用頻度を制限するといった、本意ではない形でご利用希望者を選り
好みしたり、本質的なケアマネージメントとは異なる調整を強いられたりするの
である。
「なぜ、適切な通いサービス提供に必要な面積基準をクリアしていれば、定員は
事業所の裁量で決められないのか?」と長年疑問を抱いていた。
今回発出された運営基準の見直しが、『コロナ渦』あるいは『地域特性』における
特例ではなく、通常の流れとして取り決めされることを強く願うものである。