『厚生労働省は31日、次の2024年度の介護保険制度改正をめぐる協議を進めている審議会を開き、65歳以上の高齢者の保険料について、個々の支払い能力に応じて設定する“応能負担”の性格を強めることを論点として明示。所得の高い高齢者の保険料を引き上げる一方、所得の低い高齢者の保険料を引き下げることを検討する意向を示した。制度の持続可能性を高める狙いで、年内に具体像を固める方針だ。』
との報道を見て思うこと。
以前に当ブログで、
「介護保険制度の実情と照らし合わせると消費税のそれとはかけ離れた状況にある
ように思え、ほとんど『応能負担化』してきているように感じる。」と述べた。
“応能負担”というシステムは、利用料金が支払い能力に応じて設定される方法で、
全体の支出額がさほど大きくないときには効力を発揮する優れたものである。
一方で、多くの国民が利用するために支出額が膨大な量になってくると様々な問題
が生じて、制度そのものの存続が難しくなる危険性を持っている。
医療保険や介護保険のように多くの国民がサービスを利用する場合においては、
全体の支出額が膨大な量となってしまうため、支出に見合った財源を確保すること
で精一杯となるため、自己負担額も大きくなってしまう。
そのため、消費税は“応益負担”を採用しており、介護保険制度も同様の方法を採用
することとなった。
ところが、介護保険制度を利用する前提として支払う保険料は、「累進方式」を
採用しており、所得が高ければ支払う保険料も高く設定される。また、介護保険
サービス費の自己負担割合も所得によって1割~3割と段階的な設定となって
いる。さらには、高額介護サービス費、負担限度額など所得によって負担額が変わ
る制度がいくつもあり、制度が改定されるたびにこのような色合いが濃くなって
いるため、このままの状況を放置しておくと、将来的に自己負担割合が7割8割と
なることも不思議ではなくなる。
つまり、介護保険制度は、施行当初とは大きく変わり、“応益負担”から旧来の
“応能負担”へ戻りつつある。
そして先日の審議会で協議された内容はこの状態にさらに拍車をかけようという
ものである。ただでさえ大きな負担を強いられているのに、所得が少しばかり高い
からと言ってさらに多くの負担を強いられることになれば、どうなるだろうか。
それに、“所得が高い方”というと大金持ちをイメージする人が多くいるかもしれ
ないが、今回のそれは人よりほんの少しだけ所得が多い人がターゲットだ。
「応益・応能」いずれにもメリット・デメリットがあり、不平等は存在する。
そもそも万人にとって平等な制度などこの世には存在しない。
しかし、このまま介護保険制度が『応能負担化』していくことは、制度崩壊の
カウントダウンを意味しているように思う。
ではどうするべきなのか、少し長くなったので続きは次回に持ち越そう。