北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

耳を傾けるべき相手はだれか

2022.11.4

ここ最近、次期介護保険制度改定で“要介護1と2の方に対する訪問介護、通所介護

を市町村の「総合事業」へ移管”や“介護サービス自己負担額の増額”が現実味を

帯びてきたことを受けて、「介護サービス利用控えが増えて、顧客(ご利用者)が

激減する!」として、介護サービス事業者へ顧客(ご利用者)確保に向けた事業

努力をするよう危機感をあおる論調が散見される。

さらには、その論調を強調して、介護サービス事業者へ売り込みをかけてくる

コンサルティングを名乗る怪しげな者が増えてきたように思う。

 

本気で介護サービス事業者を心配し応援している人もいるのかもしれないが、この

論調は何と短絡的で思慮が浅いことかと思ってしまう。

 

介護サービス事業者の経営が厳しくなる原因は、「顧客(ご利用者)確保できない

から」という単純なことではない。

例え、顧客(ご利用者)確保が十分にできていたとしても、提供したサービスに

見合う介護報酬が得られなければ事業運営を継続することが難しくなる。そして、

それは財源論と強く結びついており、総合事業へ移管や自己負担額の増額へと話が

結びついていく。限りある介護保険財源を増え続ける介護サービス利用者へ配分

するためには“広く浅く”配分せざるを得ない。結果として介護報酬が減り続ける

ことは火を見るより明らかなことである。そのため、より介護の必要性の高い方々

に、より多く配分するためにはどのようにすることが適当であるかが話し合われて

いる。

 

介護サービス事業の今後は、もはや政治判断の段階にあり、顧客(ご利用者)確保

に向けた事業者の努力で、どうこうなる問題ではない。それほど、少子高齢化が

社会保険政策に多大な影響を与えているということを介護業界に身を置く者たちは

理解しなければならず、「法人(会社)が努力すれば何とかなる!」などと能天気

なことを言っている場合ではない。

そんな能書きを聞くために高額のコンサルティング料や講演会費を支払っていると

すると、そんな事業者は○○○である。

 

さらに、介護サービス事業者の経営が厳しくなる原因には、「サービスの質を担保

するために必要な人員を確保できない」ことも挙げられる。

例え、顧客(ご利用者)確保が十分にできていたとしても、提供するサービスに

見合う人員がいなければ中身のない(薄い)サービスとなってしまう。

高齢者人口が増え続け、生産年齢人口が減り続けている現状を見れば、中身のない

(薄い)サービスが続出してしまうことは一目瞭然であり、そのための対策として

総合事業へ移管という話に結びついていく。

「魅力ある職場を作れば人材不足は解消される」と能天気に言う人もいるが、介護

業界の人材不足はそんなレベルの状況にはない。無論、魅力ある職場を作ることは

大切なことであることは言うまでもないのだが、その程度のことで解消できるほど

現実はあまくない。

もはや政治判断の段階にあり、事業者の魅力ある職場づくりといった努力で、人員

の頭数をそろえることができたとしても、サービスの質を担保することは難しく

なり、優秀で誠実な人材がバーンアウトしてしまう危険性が高い。

 

“要介護1と2の方に対する訪問介護、通所介護を市町村の「総合事業」へ移管”は、

短期的なものの見方をすると「やってもやらなくても介護サービス事業者の経営が

厳しくなる」と考えられる。

しかし、やるとやらないとでは大きな違いもある。それは、長期的なものの見方を

すると、総合事業へ移管を実行することによって、「介護サービス事業者が経営

しやすくなる」ことと「不用意に重度要介護者を犠牲にしなくて済む」ことだと

考えられる。

 

社会保険政策の本質を捉えずに、“とにかく反対”して、目先の利益のみを追求しよ

うと考えているような事業者には、5年10年先に明るい未来は待っていない。

また、介護サービスの今後は、一つの物差しで測れるほど単純なものではない。

まして、法人(会社)は100社100色であり、経営理念や事業を運営する地域

事情などによっても、向かっていく方向性はまるで違ってくる。

余計なお世話かもしれないが、「顧客(ご利用者)確保のために」などというお題

目のコンサルや講演にムダ金を支払う暇があるのであれば、経営理念や事業を運営

する地域の実情を今一度見つめなおした方が良いのではないかと思ったりする。

 

それを「しない。できない。」あるいは「将来など知らん。目先の金が重要。」と

いうのであればそれはそれでかまわないが、いつの日か自然淘汰されて、コンサル

や講演の講師に文句を言っても後の祭りにしかならない。