労働者不足が深刻化してきている現状を踏まえて、国会では「年収130万円の
壁」を解消する案が議論された。
「年収130万円の壁」とは、扶養者が会社員の場合、自分の年収が一定の金額を
上回るまでは、扶養者の「社会保険上の扶養」に入ることができるため、社会保険
料を払わなくて済むが、年収が「130万円以上」になると、本人が社会保険に加
入することになるため、給与から社会保険料が差し引かれて、手取りが減ることに
なるという仕組みのことを言う。
そのため、もっと働くことが可能であったたしても、手取りが減ることを嫌い年収
を抑える働き方をする人が非常に多くいる。
結果として、労働力不足解消の足かせとなっているのではないかとの理屈から、壁
の高さを140、150万円に引き上げるとか、差し引かれる社会保険料に相当す
る分を国が補填してはどうかといった議論が行われている。
しかし残念ながら、いま議論されている程度の内容では労働力不足の解消は“焼け
石に水”といっていいだろうし、手取りが減る分を国が補填するなど原理原則を無
視した暴論でしかない。
そもそも、昭和の古き良き時代の一般的なモデルである「お父さんが会社で働いて
専業主婦のお母さんがパートに出る」といった概念を令和のこのご時世に当てはめ
ようとすること自体無理がある。
生き方も働き方も多様化している今を生きている人たちを大昔の概念に当てはめて
もミスマッチしか起きない。
古き良き時代から抜け出せず、今を生きていない政治家がどれだけ議論しても、
労働力不足を解消することは困難を極めるとしか言いようがない。