『1月29日に筆記が実施された今年度の第35回介護福祉士国家試験の受験者数が分かった。社会福祉振興・試験センターの報告によると、前回より3931人少ない7万9151人が受験した。減少は2年連続となる。直近3年間は8万4000人前後で横ばいだったが、6年ぶりに7万人台まで低下。過去10年で2番目の少なさとなった。』
との報道を見て思うこと。
受験対象となる人口が減ってきているのだから、このような結果になることは凡そ
わかっていることではあるが、それでもこういった数字を目の当たりにすると、
いよいよ介護業界の人員不足が加速していくことを思い知らされる。
人材不足への対処としては、効率や生産性の向上が重要な要素となり得るわけだが
「サービスの質の維持向上」と「生産性の維持向上」が遭い入れない関係性にある
点が多々あることを考えると、医療や介護業界にとっては非常に高いハードルと
なってしまう。
サービスや品質を維持向上するためには、どうしても手間と時間と人手がかかる。
人類の英知を結集して、機械化やAIを導入しつつクオリティーを担保することに
成功している分野も多くあるが、クオリティーを多くの消費者が納得できる程度に
留めつつ必要量を供給することが優先される分野もある。
医療や介護業界でも機械化やAI導入は少しづつ進んでいる。ただ残念ながら、主要
な業務を置き換えることができるほど科学は進歩しきれていないため、どうしても
手間と時間と人手が必要となる。
また、人の生命や生活維持に直結することを生業としている分野だけに、「この
程度のサービスの質で」といって納得を得ることもまた難しい。
その最たる事例が、当ブログでしつこいほど取り上げている『要介護1と2の高齢
者に対する訪問介護、通所介護を市町村が運営する「総合事業」へ移管する構想』
に対する反応であろう。
別段この構想は、要介護1と2の方に訪問介護、通所介護サービスを利用できなく
させてしまおうというものではない。人材不足を鑑みて、少ない人員でかつ専門職
の介入を減らしつつもサービス提供体制を維持していこうというものである。
にもかかわらず、「反対反対」の大合唱が巻き起こる。
人手が足りていようがいまいが関係なく、高品質なサービスへのあくなき要求が
どこまでも続く。
ただあえて言わせてもらえば、介護の分野では「高品質=多くの専門職の介入」
とは限らない。地域の中で生活を営んでいる私たちにとって、地域の支え合いに
よって生活を継続することができることが高品質であることも非常に多くある。
そしてそこには必ずしも「多くの専門職の介入」が必須ではないばかりか、少しの
専門職の介入の方がより有効に働くことも少なくない。
介護業界にかかわりのない一般の方々にこのような考え方を理解してもらうことは
中々難しいのかもしれないが、介護業界の人間の一部が一緒になって「反対反対」
の大合唱をしているとは情けない。