北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

国民負担の増額を訴える前にやるべきことがある

2023.2.16

厚生労働省が公表した『介護施設・事業所の経営状況を把握する調査』を見ると

通所系サービスと特別養護老人ホームの収支が、他の介護サービスと比較すると

非常に悪いことがわかる。

 

こうした結果を受けて、「通所系サービスと特別養護老人ホームの介護報酬をもっ

と引き上げたほうが良いのではないか」との声が業界内から上がっている。

 

しかし、特別養護老人ホームの報酬引き上げには疑問を感じている。

特別養護老人ホームの経営母体である社会福祉法人は、その他の介護保険サービス

の経営母体である医療法人や株式会社、有限会社、特定非営利活動法人などと比較

すると、“経営努力”という点において改善できる余地が多くあるように思う。

 

 

営利企業は、収入に見合った支出を計上して赤字にならないような経営努力をして

おり、収支が黒字計上されれば、当然黒字の額に見合った法人税を納める。

ところが、社会福祉法人はというと、旧制度時代の国家公務員に準ずる給与体系を

維持していたり、営利企業が申請することすら許されない補助金や助成金に収入の

一部を頼っていたりなど、収入に見合った支出の計上などの身の丈に合った振る舞

いや企業努力を十分には行っていないところが多くあるように思う。

 

それに、社会福祉法人には他の営利企業と比較すると多くの優遇措置がある。

例えば、収支が黒字計上されたからといって法人税を納める義務はない。そのため

儲かればその分だけ法人にお金をため込むことができる。そのかわりに公益性の

高い役割を担うこととされているが、介護保険制度が始まって以降は営利企業も

積極的にその役割の一部を担っており、社会福祉法人を特別視することはなくなっ

てきている。

 

また、法人税が免除されている理由には、「目に見える収入が得られにくいインフ

ォーマルな活動の推進」があげられるが、正直申し上げてこうした活動を実行して

いる社会福祉法人はごく少数である。

さらには、「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージの一環として、介護

事業の生産性向上を支援するため、社会福祉法人においては、公的保険制度の範囲

外で行う事業を収益事業とみなす」といった幾重にもわたる優遇措置が講じられて

いる。

 

介護保険サービス事業という同じ土俵の上で運営していて、この様な優位な立場に

ありながら収支の状況が悪いとなると、社会福祉法人の経営者の多くは、役人気質

が抜け切れていない「金が足りなきゃ、国民の負担額を増やして補填すりゃいい」

くらいのことしか考えていないのではないかと疑いたくなる。

 

方や経営努力をしていて黒字、方や経営努力を怠っていて赤字という状況にあっ

て、社会福祉法人に救いの手を差し伸べる理由が見当たらない。

社会福祉法人の多くは、介護報酬引き上げという国民負担の増額を訴える前に、

営利法人並みの経営や運営努力をするところから始めるべきだろう。

 

しかし、この法人格には旧制度時代ほどの価値はもう無いような気もする。