前回、
『当ブログで、「高齢者厚遇と若者冷遇」、「低負担高福祉」、「公的サービス
依存」といった現状の是正を繰り返し訴えてきた。そうしなければ、現状の社会
福祉や社会保障制度を維持できないからだ。』
と申し上げた。
介護保険サービス事業を長年運営していて、「これはいくら何でも過剰だろう」と
思われる援助を強く要望(あえて強要とは書かないが)されることが多くある。
例えば、通所サービス事業所に対して、“要支援者”を担当するケアマネジャーや
地域包括支援センターの職員から「通所サービス利用時の入浴介助」を強く求めら
れることである。
“要支援”という認定の定義は、「介護が必要ではないが、介護が必要になる危険性
が高い」という状態像にある。つまり、“入浴介助が必要な状態”は要支援者の状態
像に合致しない。
そのため、入浴介助にかかる介護報酬の対象者から“要支援者”は除外されている。
しかも、よくよく話を聞いてみると、自宅で一人で入浴している方ばかりである。
にもかかわらず、担当するケアマネジャーや地域包括支援センターの職員(以下、
ケアマネ等と書く)はご利用者の要望を叶えるように通所サービス事業者へ強く
依頼する。
なぜそうなるのかというと、ケアマネ等は「ご利用者の要望に応えないと嫌われて
しまう」と考え、適切なケアマネジメントを度返しして、御用聞きに徹するので
ある。また、通所サービス事業者が過剰と思えるサービスを提供したとしても、
自分の腹が痛むわけではない。
「だったら、通所サービス事業所はそんな要望を断ればいいじゃないか」と思う人
もいるかもしれないが当方のサービス事業所が断ったとしても、ケアマネ等が別の
サービス事業所を調整するだけだし、顧客欲しさに「何でもやります」と豪語する
サービス事業所はいくらでもいるので、何の解決にもならない。
ケアマネ等に直接かかわる『居宅介護支援費の有料化』が介護保険制度改定案の
議題にあがると、「自己負担金が発生することで、利用者や家族からの有用性が
低いあるいは現実的ではない要望(いわゆるゴリ押し)を引き受けざるを得ない
状況になりやすい」などといって有料化へ反対する業界関係者がいるようだが、
心配することはない。御用聞きケアマネ等は今でも十分すぎるくらいいる。
人も金も足りなくなってきている状況にあって、こうした過剰なサービスが当たり
前のこととして扱われてしまうと、そう遠くない将来介護保険制度は崩壊する。
通所サービス事業所は、「本当に入浴介助が必要な方へサービス提供したいのに、
必要のない人への対応を数多く求められるので、人手が足りなくて十分なサービス
提供ができない」と悩んでいるが、残念ながらそんな思いは御用聞きケアマネ等に
は届かない。
はっきり言って、公的サービスの領域を大幅に超えている。何でもかんでも介護保
険サービスで賄おうとしてしまえば、そりゃ~人だってお金だって足りなくなる。
通所サービスは、税金を使って運営する銭湯ではない。
だから『要介護1と2の高齢者に対する訪問介護、通所介護を市町村が運営する
「総合事業」へ移管する構想』という介護保険制度改定案の議題にあがるのだと
いうことを、こうした構想に反対を唱えている御用聞きケアマネ等とその同類の
人たちは、よくよく考えたほうがいい。
この構想は、「財務省の陰謀」でも何でもない。社会福祉や社会保障制度の未来
をしっかりと考えてこなかった御用聞きケアマネ等や見境なく何でも引き受けて
しまったサービス事業者の振る舞いが生み出した結果にすぎない。