先日、互助支援や地域社会福祉などを主な活動としている全国組織(一部海外にも
拠点があるらしい)の江別支部『ナルク江別』の役員の方から「開設25周年に
あたる今年の総会で講話を頂きたい」とのありがたい申し出があり、詳しく話を
聞くことになった。
同会は、コロナ禍で休眠中の『大麻地域創造会議』のメンバーでもあり、古くから
お世話になっている馴染みの方でもあって、当方の事業や活動に積極的に興味を
持っていただいている大切な方々である。
今回の講話の内容について打ち合わせをしていた際に、役員の方から「介護施設と
はどのような種類の物があり、それぞれどのような機能を持っているのかを知りた
いと考えている会員の方が多くいる」との話があった。
確かに、2000年に施行された介護保険制度は、24年の経過の中でバージョン
アップをし続け、複雑化し続けているため、一般の方には理解しきれない内容と
なってきている。
しかし、その場でもお伝えしたのだが「好奇心を満たすあるいは専門家からの説明
を理解することができる程度の知識を得るといった目的で施設の種別や機能の理解
を深めることは良いのだが、実践する目的で施設の種別や機能を記憶することに
あまり意味はない」と考えている。
なぜならまず第一に、先ほど申し上げた通り、介護保険制度はバージョンアップを
し続けている。今ある施設の種別や機能が今後も変わらず続く保証はどこにもなく
古い知識のまま実践に移そうとした場合にミスマッチが起こる危険性が高いため、
常に知識をバージョンアップさせておかなければならない。
そして第二に、ケアマネジメントの理解を深めずに、施設の種別や機能の理解のみ
が深まると、「〇〇という病気だから〇〇という施設がいい」とか「○○という
体の障がいがあるから○○という介護サービスがいい」といった具合に、短絡的な
カテゴライズ思考によって施設や在宅サービスを選択してしまう危険性がある。
これまでにも、不完全な知識を持つ身近な方の勧めでミスマッチな選択をしてしま
うケースを幾度となく見てきた。
これは、医学や薬の知識を深めることと似ている。
そういった知識を深めることは素晴らしい考え方ではある一方で、古い知識や偏っ
た知識をもとに行動しようとすると命を脅かすミスマッチを引き起こす危険性を
持っている。まして、自分の助言によって他者をこうしたミスマッチに誘導してし
まうなどということは絶対に避けなければならない。
年を重ねるにつれて、「今後も自分が思い描くような生活を続けることができるの
だろうか」という不安が頭をよぎることはとても理解できるし、だからこそ将来に
役立つ情報を少しでも多く集めておきたいという気持ちもわかる。
だからこそ、施設の種別や機能の理解を深めることよりも、「自分が思い描くよう
な生活」とはどういった生活なのか、「そんな思いを聞き取ってくれる専門家は
どこにいるのか」ということについて時間を使ってほしい。信頼できる専門家が
身近なところにいるのかどうかについて、仲間同士で話し合ってほしいと思う。
我々は、そういった不安を少しでも解消することができる「身近な専門家」であり
続けたい。