ここ最近、「担当のケアマネージャーを変えたい。」と望む方々の話をやたらと
耳にする。
当ブログの『居宅介護支援費の有料化』で取り上げたように、ケアマネージャー
の多くは、「自己負担金が発生することで、ご利用者やご家族からの有用性が低い
あるいは現実的ではない要望(いわゆるゴリ押し)を引き受けざるを得ない状況に
なりやすい。」ことを恐れている。
なぜ、そんなに恐れるのか?
それは、『いわゆるゴリ押し』に応対しなければ、ご利用者やご家族が自分の
元から離れてしまうと考えているからである。
例えるなら、患者が「先生に〇〇という薬を出してほしいと頼んだのに、処方して
もらえなかった。あの先生にはもうかからない。」となることを恐れ、必要のない
薬でも処方してしまう医者と類似する状況といったところか。
このように、顧客の要望に専門性を示さず受け入れて対応することを『御用聞き』
と表現することがあり、我々の業界でも『御用聞きケアマネ』と揶揄される。
本来の意味はさておき、この『御用聞き』と揶揄される専門職に欠落していること
は『説明と同意』の手続きである。
先ほどの医者と患者のやりとりで考えると、
①なぜ、〇〇という薬が必要と患者が考えているのか。
②患者が考えているその症状に最も有効な手立ては何であるか。
③〇〇という薬がその症状に無効あるいは有害であること。
といった手順で、患者にわかりやすく説明して、同意していただく必要がある。
こういった手順を面倒に感じて怠る、または専門性が低く手順どおりに進めること
ができない専門職が『御用聞き』に成り下がる。
さらに言えば、「説明された内容を理解はできても受け入れられない。」という
顧客側の心理が働くことも珍しくないため、同意を得るためにはある程度の時間や
労力を必要とすることも多い。
ここで、手間暇を惜しんで『強引に説得して、無理やり同意させる』と当然のこと
ながら顧客の心は離れていく。
前述の専門職には、医療や介護、福祉にかかわる専門的な知識とともに『コミュ
ニケーションスキル』が強く求められる。
自分にそのスキルが備わっていないことを棚に上げて、『ゴリ押し』などと言って
顧客側に責任を転嫁すること自体、専門職とはいいがたい。
ご利用者やご家族が「ケアマネージャーを変えたい。」というのは、自分の要望を
聞いてくれないからではない。『説明と同意』の手順が不十分で信用できないから
に他ならない。