今月1日にオープンした『のみ食い処 とっかり』は、おかげさまで多くのお客様
にご来店いただいている。
飲食店なので当然のことながら、提供した飲食サービスはお客様に全額負担して
いただくことになる。当たり前のことなのだが、長年公的社会保険サービス事業に
携わっていると、不思議な光景に思えてくる。
私たちが提供する介護保険サービスの対価の内、7~9割は公金を財源として国や
地方自治体等から頂戴する。そして、残りをご利用者にご負担いただく。
つまり、受け取る報酬の大部分は、直接サービス提供を受けていない方々も含めた
全国民から頂戴していることとなる。
「性質の異なるものなのだから両者を比較すること自体がおかしい」と言われて
しまえばその通りなのだが、全額お客様に代金をご負担いただく飲食店は、様々な
努力と工夫をしてお客様の満足度を高めようとしていることと比べると、介護保険
サービスの事業者はそこまでの努力や工夫をしているのだろうかと思ってしまう。
まして、ご利用者に暴力をふるったり、命を殺めたりするなど論外中の論外だ。
飲食店ではマナーの悪いお客様に遭遇することもあるし、酒類を提供するお店では
酔った勢いでトラブルが発生することもあるだろう。それでも、入店を拒否する
ことはあっても、お客様に暴力をふるったり、命を殺めることは起こらない。なぜ
ならそんなことをしてしまえば、いくら自分たちの正当性を訴えたとしてもその店
は閉店を余儀なくされてしまうからである。
これまで、介護保険サービスをご利用されていた方で、スタッフから暴力を受けて
きた方が何をしたというのだろうか。何も悪いことはしていない。未熟なスタッフ
から一方的に暴力を受けてきただけだ。
飲食店であれば即閉店に追い込まれるというのに、そういった事象が発生した施設
はなぜノウノウと事業を継続することができているのだろうか。
社会保険サービスに携わている者たち(自分も含めて)は、どこかで「国に守れて
いる」という甘えや「必要なサービスだから潰れない」といった驕りがあるのでは
ないだろうか。
長年公的社会保険サービス事業に携わっているとよく耳にする言葉は、「無理、
出来ない、やりたくない、断りたい」といった類が非常に多い。
社会保険サービス特有の”きめの細かいルール”が存在してたとしても、様々な工夫
を施すことによって、対応できることはいくらでもある。私たちが頂戴している
報酬は目の前にいるご利用者からだけではなく多くの国民から頂戴しているという
自覚を持たなければならない。
公金を財源としている我々介護保険サービス事業者こそ、もっと努力と工夫をすべ
きなのではないだろうか。