介護保険制度が施行されて25年目に入っている。
この歴史の中で、制度は何度も見直されて国民にとって無くてはならない社会保険
制度へと洗練されてきているのではないかと思う。
そして、同制度の要と言われている介護支援専門員への期待もより一層広がって
きているように思う。
そうした中で、あくまでも私見ではあるが、介護支援専門員の仕事ぶりを拝見して
いると、同じ介護支援専門員であっても本質的な業務に対する考え方や振る舞いが
「ソーシャルワーカー」と「保険代行屋」に二分されてきているように思える。
『ソーシャルワーク』とは、生活上の課題を抱えた個人への働きかけを通じて、
社会全体の課題として取り上げて、社会に対して働きかけを行うこと。
また、社会に直接働きかけることによって、個々が抱える生活上の課題を解決へ
導くことであり、その担い手となる専門職がソーシャルワーカーだろう。
私の理解では、介護支援専門員はソーシャルワーカーとしての役割を担うことを
期待されて世に生み出された専門職と認識している。
ごく少数ではあるがソーシャルワーカーとしての役割を担っている介護支援専門員
は実在する。しかし残念ながら、絶滅危惧種に指定されてもおかしくないほど減り
続けているように思える。
それは、介護支援専門員=「保険代行屋」と認識する者が増えてきているからでは
ないだろうか。
ここでいう保険代行屋とは、給付対象となる保険情報を管理して、利用可能な保険
サービスを調整し、現物支給化することで対価を得ている人達を指している。
この人達は、ご利用者に保険サービスを利用してもらい、代行手続きに係る行為を
対価として報酬をいただくことが目的であるため、保険サービスを利用するか否か
が一番の関心事となる。
当ブログで何度か触れている「右からケアプランを作る人」がまさしく保険代行屋
に該当する。
ここでいう保険代行屋の特徴は、「生活上の課題を抱えた個人に関心があるのでは
なく、保険サービスの利用に結び付く生活上の課題に関心がある」ことなので、
「社会全体の課題把握や社会への働きかけ」には全く興味がない。さらに言えば、
生活上の課題はあっても保険サービスに結び付かなければ、興味の対象から外され
てしまう。
最近、介護保険政策にかかる諮問会議に出席している学者から「ルーティン化でき
るケアマネジメント業務を行う準ケアマネ」なる資格の創設が提案された。
バカバカしい提案ではあるが、現状を見ると”言い得て妙”である。
あえてその学者の提案に乗っかるならば、保険代行屋まがいの介護支援専門員を
「準ケアマネ」として、ソーシャルワークができる介護支援専門員を「正ケアマネ」
とすると言ったところだろうか。
冗談のようだが、現状を見るとあながち冗談ではなくなるようにも思える。
ルーティン業務を行う保険代行屋なら、深い見識や広い知識は無くてもある程度の
役割を担うことは可能かもしれないし、人手不足の解消に一役買うことにつながる
かもしれない。
でも本当にそれでいいのだろうか。