先日、当方の通所介護(デイサービス)をご利用されていて、新型コロナウイルス
感染症予防のために、数か月間サービス利用を自粛していた方と久しぶりにお会い
して驚いた。
自力で歩くことに大きな支障をきたしていなかった方が、歩行器なしではバランス
よく歩くことが難しくなっていた。
そのご利用者から話しをうかがうと、その間に大病を患ったわけでもなく、転倒等
によって体を痛めたということもなく、通所介護で実践していた運動等を自宅でも
ある程度実践していたとのことだった。
コロナ禍にあって外出や活動の制限を受けていたとはいえ、通所介護のサービスを
利用しなかった数か月間がここまで影響を及ぼすとは思っていなかった。
新型コロナウイルスに感染することは、高齢者の生命や生活に大きな影響を及ぼす
ことは周知のことと思うが、『援助を必要とする高齢者の身体機能の維持』には、
通所介護サービスの利用継続がいかに重要かを改めて知らされたことになる。
来年度の介護報酬改定に向けた審議会等では、盛んに『科学的介護』をうたい文句
に医療従事者を積極的介入させた医療モデル型の介護を実践する内容を盛り込んだ
加算等の創設や書式の導入が話し合われている。
この流れについて、細かなところで物申したい所はあるが、大筋では賛同できる。
しかし、医療モデルでは『援助を必要とする高齢者の身体機能の維持向上』が重要
と言いながら『向上』ばかりに目を向けて、『維持』が軽視されがちだった。
また、医療モデルでは、生理的・解剖学的視点で心身機能を捉えることが重視され
情緒的な結びつきによる精神及び身体的活動が軽視されがちであった。
高齢者介護の現場に、客観的に評価しやすい数値化を積極的に取り入れようとする
ことそのものは悪いことではないが、数値化しにくい事象についても同時に評価の
対象としなければ、『援助を必要とする高齢者の身体機能の維持』が絵に描いた餅
で終えてしまうことを厚生労働省も医療モデル推進者も理解を深めたほうが良い。
当ブログ、『介護予防短期集中プログラムの愚』でも取り上げた通り、高齢者介護
にかかる政策では、医療モデルはことごとく失敗に終わっている。
人を動かしているのは、「筋肉」ではなく「心」なのだから。