介護支援専門員不足が深刻化してきている。
全国社会福祉協議会が公表した調査結果によると『介護支援専門員の有効求人倍率
は昨年12月の時点で4.04倍』だそうである。
この先、高齢者人口が増え続け、生産年齢人口が減る続ける状況からこの求人倍率
が上昇し続けることは火を見るよりも明らかであろう。
こうした中で、関東の10都県の知事からなる「関東地方知事会」が、介護支援専
門員実務研修受講試験の受験資格を緩和するよう国に求める方針を固めたそうだ。
その提案内容とは、5年前の介護保険法改定によって除外された『実務経験のある
介護福祉士以外の介護職員』を受験資格要件に復活させることである。
たしかに、この要件を外したことで介護支援専門員実務研修受講試験の受験者が
激減した。そのため、頭数を確保するという観点からこのような提案を出すことは
一定の合理性はある。
しかし、私はこの提案には大反対である。
介護支援専門員に求められる技術は、『介護技術』ではない。何年もかけて介護の
技術を磨いたとしても、介護支援専門員に求められる対人援助技術やマネージメン
ト能力が磨かれるわけではない。
残念ながら『介護福祉士以外の介護職員』は、主体的に学ぶ機会を作らない限り、
職に就く過程で介護支援専門員に求められる知識や技術を習得する機会がない。
介護支援専門員に求められる対人援助技術やマネージメント能力は、介護支援専門
員実務研修で数日教わった程度で習得できるものではない。それでも、一度資格を
取得すると「一人前の専門職」として扱われることになり、足りない知識や技術は
我流で磨いていくしか術がない。
こんな個人の”主体性任せ”がスタンダードな資格など聞いたことがない。
そんな流れで資格を取得して現場に放り投げられてしまう介護支援専門員が気の毒
でならないし、なによりそんな人に担当されてしまうご利用者は大迷惑だろう。
国が、介護支援専門員を”安かろう悪かろう”と位置付けているのであれば、「関東
地方知事会」の提案通りに進めていけばよいのかもしれないが、本来そうではない
はずだ。
介護支援専門員不足の対策として今一番求められていることは、専門性が高い業務
に相応しい介護報酬を確保したうえで、軽度要援護者を対象者から外すして総数を
減らすことではないだろうか。