北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

介護報酬改定に向けた攻防戦

2023.7.18

来年4月に迫る次の介護報酬改定に向けた協議が佳境を迎える中で、各団体は自分

たちの事業を守るべく、様々な要望や要請を行っている。

こうした要請の内、特に改定のたびに報酬引き下げの憂き目にあい、事業の継続が

難しくなってきている通所介護にかかわる主張がヒートアップしてきている。

 

まず一つは、積雪寒冷地の事業所では、冬季の原燃料費や除排雪費、送迎時間の

増加などの負担がかかるため、事業者からは効率的なサービスの提供が難しいこと

を受けて、冬季の負担増を再評価して、事業所がサービスを持続的に提供していけ

るように見直しを要請している。

 

さらに、前回の改定で新設された、個別計画を立てて自宅での入浴の自立を目指

す「加算II」の算定率が低く、実質的に報酬減となった事業所が多いことを受けて

中重度の利用者は『加算II』になじまない。入浴にかかるコストは年々大きくなっ

ており、今より算定しやすくするなど検討が必要と要請している。

 

そして、スケールメリットを考慮して規模の大きな事業所の基本報酬を減算する

現行の仕組みについて、サービスをより効率的に提供できるよう大規模化を促す

流れに反しているとして、早期の見直しを要請している。

 

積雪寒冷地への対策は、北海道で事業を運営する者であれば誰でも望むところで

はある。夏季と冬季では送迎に要する時間が大きく変わってくるため、冬期間の

サービス提供時間については柔軟に考える必要があるだろう。

ただし、「燃料費や除雪費」のことを言い出すと、「冷房をより多く使用する地域

の対策は?」とか「風水害の多い地域の対策は?」など、きりがない。

あらゆる対策を介護保険制度で補おうとすることには無理があるだろう。

 

新設された入浴加算の算定率が低いことについては、結果として実現しなかったと

しても、介護保険サービスが”自立支援”をうたっている以上は、入浴の自立を目指

すことは当たり前のことであり、算定率が低いからといって「算定要件のハードル

を下げてほしい」とはお門違いの要望だろう。

それよりも、自宅で一人で入浴できている方に対して、深く考えずに通所サービス

利用時にも入浴サービスを提供していることの方が問題だろう。

通所サービスは銭湯ではない。

 

大規模事業所の基本報酬減算への是正については、概ねその通りだろうと思う。

金がない、人がいない介護保険サービスにおいて、スケールメリットを活かすこと

ができる方法を重宝すべきだし推進していかなければならない。

 

しかし同時に考えなければならないこともある。

大規模事業所が成立するのは、都市部など人口の多い地域に限られる。過疎地域等

では大規模なニーズを必要としていない場所も多く、事業が成立しにくい。さらに

北海道のように送迎範囲の広い過疎地域においては、片道1時間以上かけて隣町に

ある通所介護事業所へ行くことは、ご利用者の心身の負担以外の何物でもない。

そうした地域でスケールメリットを活かしつつ、必要なニーズにこたえるサービス

は『多機能サービス』だろう。

そのため、過疎地域については、通所介護事業の改善よりも多機能サービスの運営

が上手くいくような改善が求められるのではないかと思う。