北海道江別市でケアプランセンター、小規模多機能ホーム、デイサービス、訪問看護ステーションを運営するみのりの丘グループ

みのりの丘

みのりの丘代表ブログ

本当に必要としている方が利用できない

2023.7.21

『厚生労働省が介護保険の福祉用具貸与・販売の見直しに向けた検討を進めるため

の有識者会議を20日に開催し、福祉用具を貸与で使うか、販売で使うかを利用者

が選べる選択制の導入の是非などを論点として提示した。』

との報道を見て思うこと。

 

介護保険サービスに位置付けられている福祉用具には、貸与を前提とした車いすや

特殊寝台(電動ベッド)などと、購入を前提としたポータブルトイレやシャワー

チェアなどがあり、紙おむつや比較的安価な介護用品は、介護保険対象外となって

いる。

 

福祉用具の購入品目は、いくら殺菌消毒したとしても使い回しがしにくいトイレや

浴室関連の品物が多く位置付けられている。

福祉用具の貸与品目は、比較的高価で殺菌消毒することで使い回しに適した品物が

多く位置付けられている。

 

上記報道に挙げられる議論は、保険給付の抑制につなげる狙いがあることは理解

できるが、貸与と購入に振り分けた前提条件を根底から覆すかなり横暴な内容と

なっている印象が強い。

「”有識者”会議といいながら、かなり雑な議論を展開している」と率直に思う。

 

前提条件を変えずに保険給付費の抑制を図りたいのであれば、そういう話ではない

だろうと思う。

例えば、介護保険サービスに位置付けられている福祉用具貸与品目に『歩行器』が

ある。介護保険制度開始当初の20数年前には、開発も物流も今ほど進んでいなか

ったこともあり、種類も少なく購入すると数万円は下らない商品ばかりであった。

しかし、開発や物流が進むにつれて、数千円で購入できる商品が種類やデザインも

含めて増えた。

これは、介護保険対象外となっている比較的安価な介護用品と金額に大きな開きが

ない。そしてこのことは、四点杖や置き型の手すりにも同様の状況がみられる。

こうした品目を介護保険対象から外すと言った議論の方がよほど真っ当ではないか

と思う。実際、そういった品目をホームセンター等で自費購入して使用している方

がたくさんいらっしゃる。

 

ただ、こういった議論が議題にあがると「介護保険サービスから外すとメンテナン

スや安全性の確保が難しい」という反対意見が起きる。

しかしそれは違うだろう。

 

これまでも、置き型の手すりが洗濯物の物干し代わりに使われていたり、電動ベッ

ドなのに常時電源が抜かれた状態で使用されてたり、車いすが物置の奥底に眠った

ままになっているといった状況をいやというほど見てきた。

「メンテナンスが大事」とか言いながら、福祉用具事業者は使用内容を全然把握し

ていないか見てみぬふりをしているのではないか。

 

さらに言えば、一般の商品にもメーカー保証や販売店保証が付いている物が多く、

有料でさらに手厚い保証を受けることもできる物もある。福祉用具についても同様

の取り扱いとすればよいだけの話である。

 

横暴な議論による締め付けで、「本当に必要としている方が利用できない」という

状況にだけはしないでもらいたい。