来年4月に控える次の介護報酬改定でポイントの1つになる『介護施設・事業所の
管理者や専門職らの柔軟な働き方』について、今月8日の審議会では、多くの委員
から人員配置基準を思い切って緩和するよう促す声があがった一方で、連合の小林
司生活福祉局長は、「人手不足の中で兼務を進めていくと、利用者の安全やサービ
スの質に影響したり職員の負担が増えたりして、悪循環に陥る懸念がある」、「兼
務が常態化すると、有給休暇や休憩が取りにくくなるなど処遇改善に逆行する恐れ
もある。離職理由にもなりかねず、慎重な検討が必要だ」とおっしゃっている。
どうやら、この連合の福祉局長は、介護現場の実態を全く理解していないようだ。
まず、常勤専従の配置義務がある介護サービス事業所の管理者の多くは、管理者と
して常駐していることはほぼなく、現場仕事があるから常駐しており、その合間に
管理者としての業務に従事している。言い換えれば、介護サービス事業所の管理者
業務は、常勤専従するほどの仕事量など無いのである。
また、規模の小さな介護サービス事業所であっても、比較的人件費の高い管理者を
常勤専従させなければならないため、結果として介護現場に必要な人員を雇用する
ことが難しくなり、人員不足を助長してしまう側面がある。このことは、医療系の
専門職についても同じようなことが言える。
そのため、上記委員が指摘する「職員の負担が増えたりして、悪循環に陥る懸念が
ある」、「有給休暇や休憩が取りにくくなるなど処遇改善に逆行する」は、的外れ
も甚だしいと言わざるを得ない。
それから、介護サービス事業所の管理者=経営者ではないことが多い。
当方の介護サービス事業所の管理者は、運営とサービス提供を一体的に管理する
ことが業務の中心であり、財務や労務にはほとんどかかわっていない。
それとは逆に、各介護サービス事業所間の連携(横のつながり)にかかわる業務を
担っているため、全国老人福祉施設協議会が主張する「管理者が兼務することで
経営の合理化が推進され、全体を総合的に管理することができる」や「管理者が
兼務することで事業所の方針などが統一され、サービス間連携がしやすくなる。
運営管理者もサービスに専念でき、サービスの質の向上が期待できる」が介護現場
に則した至極まっとうな意見と言える。
介護保険制度上、介護サービス事業所の管理者は、一部兼務が認められているが、
それはあくまでも”同一敷地内”にある”特定のサービス種別”に限られている。
車で数分で移動できる場所にあっても、兼務が認められないことに合理性は見い
だせない。
『規制緩和=悪』といった固定概念を持ち、介護現場のことを理解していない方が
まるで我々の味方であるかのように振舞い、的外れな指摘を展開することは”迷惑”
以外の何物でもない。
なんで、こういう人が委員になっているのだろうか。