『政府・与党は月内に取りまとめる経済対策で、介護職らの賃上げを盛り込む方針を決めた。政府内には月6千円引き上げる案があり、最終調整している。来年2月の実施を目指す。物価が高騰し、今年の春闘では他産業の相次ぐ賃上げで介護分野から人材が流出。深刻な労働力不足を止めるためにも、緊急の処遇改善策が必要と判断した。』
との報道を見て思うこと。
介護保険サービス事業を運営する経営者としては、スタッフの賃金アップにかかる
政策を検討していただくことは大変ありがたいことである。
以前に当ブログでも述べたように、介護保険サービス事業の報酬(価格)は、我々
事業者が勝手に値上げや値下げを行うことができない。そのため、事業者が賃上げ
を含めた経費の増額を検討したとしても、価格に転嫁することができないので、他
の経費を削減するしか方法がない。
他の業界が積極的な賃上げを実施しようとしている状況を考えると、こうした流れ
は必然と言えるだろう。
ただ、この報道にはいくつか気になる点がある。
「・・経済対策で、介護職らの賃上げを・・」とあるが、介護職らの”ら”って、
どの職種のことを指しているのだろうか。
例えば当方には、介護職以外に看護職、リハビリ職、ケアマネジャー、相談職、
事務職、調理員がおり、全ての職種が事業運営にかかわっている。
これまでに国は、賃金が低いとされる介護職の処遇改善を図るべく、様々な加算を
創設してきたが、処遇改善を単一の職種に偏ってしまうと会社全体のバランスが
悪くなり、結果として事業運営の継続が難しくなってくる。
なぜなら、高齢者介護の業界に身を置く者の数が増えていない中で、いずれかの
職種の処遇を上げればそこに人は集中するが、他の職種に人が集まらず介護事業が
成立しないことになってしまう。
そのため、単一の職種にではなく、業界全体の賃金の底上げを考えてく必要がある
だろう。
ただし、これから数年先に、「人口が爆発的に増えて介護業界で働く人や財源が
大幅に増える」という将来が待っているとは到底思えない。
だから現段階では、『介護保険サービスの利用に該当する者の数を減らす』しか
方法がないように思う。そしてその間に、財源や人材不足を補う方法を考えていく
しかない。