ご利用者とお話をしていてつくづく思うことがある。
先日も糖尿病を長く患っている方との話で、「糖質を控えなければ病気が悪化する
ことは理解しているが、左程長いとは思えない残りの人生を制限だらけのストレス
に悩まされる生活にしたいくない」との思いを聞いて、「そういう考え方もある」
と思ってしまう自分がいる。
こうした考え方は多くの医療従事者からお𠮟りを受けることだろうし、社会保険の
財政の視点からも異論をぶつけられることだろう。
また、「今はそう思っていても、いざ病気が悪化した時に本人がこれまでの行いを
悔やんでも手遅れになる」との意見も至極まっとうであると思う。
ただ、そういった考えや意見を理解した上でも、”本人の今の思い”を完全に否定
することが主流であってはならないと思っている。
病気になりたいと思っている人はほとんどいない。治る病気であれば直したいと
思う人も大多数であろう。
それでも、病気の発症や悪化のリスクを承知の上であっても、治療より優先したい
”思い”を持っているのが人間ではなかろうか。
例えその”思い”がスケールの大きなものではなく、些細な事柄であったとしても、
一方的に否定されるべきではないと思っている。
先日、『末期がんの父が結婚を控えている娘との生活を優先するために積極的な
治療は受けないことを選択した』というテレビドラマを見た。
作中では、父娘の揺れ動く思いや周囲の理解や支援が細かく描かれていた。
まだ完結していないドラマなので今後、父娘の思いがどのように変化していくのか
との視点で見ていきたい。
例え同じ病気を患っていたとしても、病気と向き合う考え方は人それぞれだから
100人100通りあってもおかしくはない。
医療従事者には、こうした”思い”を一方的に否定するのではなく、本人のその時の
意向に寄り添いながら、疾患管理と生活の両立をともに考える人であってほしい。
私自身、ご利用者の思いに寄り添える専門職であり続けたい。